皐月賞コース解説と求められる5つの能力
皐月賞コース解説(中山芝2000m)
皐月賞は、第3回中山8日(最終日)に開催され中山競馬場芝内回りBコースを使用します。3コーナーから4コーナーおよび正面のコース内側に傷みがあり、外差しが決まりやすい馬場状態です。
中山競馬場芝内回りBコースの1周距離は1,686m、幅員は17~29m、直線距離は310m、高低差は5.3mです。
昨年の皐月賞は重馬場2分00秒6、過去10年の皐月賞平均タイムは1分59秒5。
コースレコードはアルアインがだした2017年皐月賞の1分57秒8。
良馬場なら、2分00秒は切ってくる可能性が高く、緩みのない流れになりやすい傾向があります。
中山競馬場内回りコースの1周距離と、ゴール前の直線の長さは、4大競馬場の中ではもっとも短くなっています。
コース全体の高低差が5.3mと極めて大きく、この5.3mという数字はJRA全10場の中で最大の高低差です。
スタート地点はホームストレッチの右端で1コーナーまでの距離は約400mと十分な距離があります。
200m過ぎから1回目の高低差は2.2m、最大勾配は2.24%と日本一のキツい坂があります。
この急坂をゴールまで2度越えます。
1コーナーから2コーナーの中間までは上り坂、向正面の直線は平坦です。
直線距離は310mと短いので、能力がずば抜けていない限り、直線から追い出したのではとうてい間に合いません。
3コーナーから4コーナーの緩い下り坂を利用して、後方待機の各馬が長めのロングスパートを仕掛けてきますので、ここから一気にペースが速くなります。
コーナーの出口が小回りなので、スピードにのって進入してきた馬は外へふくらみ直線は、ばらけるのでインからの強襲も可能になります。
皐月賞で勝ち負けするには、この3コーナーから4コーナーで加速する必要があり、コーナーリングを器用に走りながら加速する機動力、直線の急坂を駆け上がるパワーと底力が要求されます。
人気薄の伏兵馬は、07年ヴィクトリーと08年キャプテントゥーレが、ともに7番人気で逃げ切って優勝しています。
人気薄の逃げ馬も決して侮れません。
中山内回りコースは形態上追い込み馬が勝ち切るのは難しい傾向があります。
差し馬の勝率が高く、連対率と複勝率は先行馬が好成績です。
総合的には先行・差しが互角で、差し馬も十分に勝負になります。
開催最終でコース内側に傷みがあり外差しが決まりやすい馬場状態なので、皐月賞は好位追走にこだわる必要はないと思われます。
過去の枠順成績を見ると、枠順は揉まれない外枠が好調の傾向があります。
激しい展開になりやすく内々で揉まれて抜け出せないことがあることが皐月賞外枠好成績の要因と思われます。
皐月賞で求められる5つの能力とは?
①脚質差し
②枠順は外枠
③長めのロングスパートできるスタミナ
④コーナーで加速する機動力
⑤瞬発力と坂を駆け上がる底力
皐月賞の歴史
皐月賞は、イギリスのクラシックレースである2000ギニーを模範に、1939年に「横浜農林省賞典」として創設されました。
1947年より距離が2000mに延長され、1949年に中山競馬場芝1950mへ舞台を移され現在の「皐月賞」に改称されました。
1950年には距離が芝2000mになり現在の皐月賞に至ります。
2010年には国際競走に指定されました。
皐月賞は、クラシック三冠の第一弾です。これまでクラシック三冠を制した馬は、1941年のセントライト、1964年のシンザン、1983年のミスターシービー、1984年のシンボリルドルフ、1994年のナリタブライアン、2005年のディープインパクト、2011年のオルフェーヴル、2020年のコントレイルの8頭のみです。
1984年以降の日本ダービー優勝馬37頭中、29頭はこの皐月賞に出走していました。
このことから皐月賞は今後の勢力を左右する重要なレースに位置づけられます。
【皐月賞2024予想】データ分析と傾向
皐月賞過去10年騎手別成績
横山武史騎手【2.0.0.1】
C.ルメール騎手【1.1.2.5】
松山弘平騎手【1.1.0.2】
川田将雅騎手【0.3.0.3】
武豊騎手【0.0.2.6】
2勝の横山武史騎手。
9回騎乗で3着以内4回のC.ルメール騎手。
6回騎乗2着3回の川田将雅騎手要マーク。
過去4勝のデムーロ騎手は18年以降6年連続着外、過去10年でも4頭中3頭の上位人気で4着以下。
6回以上騎乗で全滅は横山典騎手と岩田康騎手。
皐月賞過去10年人気別成績
1番人気【2.1.3.4】
2番人気【3.1.0.6】
3番人気【1.3.1.5】
8番人気【1.1.3.5】
9番人気【1.1.0.8】
1番人気は2勝で3着以内6回。着外4頭中3頭は単勝3倍台。
3着以内5回は8番人気、過去30年の複勝回収率172%。
前走で共同通信杯弥生賞 スプリングSを勝った4番人気以下に注意。
皐月賞過去10年前走別成績
共同通信杯【5.0.3.11】
ホープフルS【2.0.0.3】
スプリングS【1.1.2.33】
京成杯【1.0.1.4】
弥生賞【0.5.2.33】
10年中5年で共同通信杯からの直行馬が優勝、複勝率もトップ。
同コース同距離の弥生賞組は優勝皆無も2.3着が7回。
前走共同通信杯、スプリングS、弥生賞が中心。
前走が関西圏だった馬は 1勝と狙いにくい。
皐月賞過去10年勝ち馬の条件
①ノーザンF、もしくは社台F生産馬
②父系か母系にサンデーサイレンスの血が入っている
③デビューから3戦目までにオープンクラスに昇級していた
④デビューから出走したレースでは、全て3着以内
⑤1800m以上の距離で勝利経験がある
⑥上がり3F最速、または上がり33秒台で芝のレースを2勝以上している
⑦前走が重賞で2着以内
⑧前走が1番人気・2番人気
⑨鞍上にクラシック勝利経験があった
⑩前走からの馬体重が増減なし、またはマイナス体重で出走。
皐月賞データ分析まとめ
1番人気は苦戦、2桁人気の激走はない
早生まれとの逆転が生じるクラシック初戦
実績よりも前走連対しているかが大事
共同通信杯が5勝、ホープフルS組が2勝
【皐月賞2024予想】本命馬候補5選情報
【ジャスティンミラノ】好位から末脚
父キズナ。母マーゴットディド。母の父Exceed And Excel。
この時期のマカヒキ、ワグネリアン、ドウデュースと遜色はないと絶賛する、ダービー馬を3頭も輩出している友道厩舎。
新馬戦→共同通信杯とデビュー2連勝。
共同通信杯の走りも圧巻で、前半1000mが62秒7のスローペースでも、しっかりと折り合い、上がり32秒6の末脚で豪快に差し切って勝利しました。
共同通信杯後は皐月賞1本に絞って調整され、万全の状態で皐月賞へ出走できそうです。
左回りしか経験がなく、右回りの中山コースに課題は残りますが、好位から末脚が伸びる脚質で克服可能かと思われます。
潜在能力の高さからも皐月賞の主役候補です。
【シンエンペラー】世界的良血馬
父Siyouni。母Starlet’s Sister。母の父Galileo。
大物感が漂う外国産馬シンエンペラーが、日本の牡馬クラシックに参戦。
日本の馬場への適性は高いです。
昨年末のホープフルS、前走の弥生賞と、ここ2走は惜しい2着続きですが、決して力負けではなく、幼さが抜け切れてないなかで、ホープフルSのパフォーマンスは潜在能力が非常に高いことを十分に示しています。
前走後は短期放牧にだされ、順調に調整されて精神的にも成長しています。
派手さはありませんが、世界的良血馬で、期待せずにはいられません。
【メイショウタバル】まんまと逃げる
父ゴールドシップ。母メイショウツバクロ。母の父フレンチデピティ。
毎日杯は重馬場にしてはタフなペース前半1000mの通過が59秒6、直線ラスト2Fで10秒9の豪脚を発揮すると、一気に後続を突き放して2着のノーブルロジャー6馬身もぶっちぎっての圧勝して、ポテンシャルの高さを示しました。
レース間隔が短いことが懸念されますが、後続を圧倒する先行力で、皐月賞をまんまと逃げきっても驚けません。
【レガレイラ】破壊力満点の末脚
父スワーヴリチャード。母ロカ。母の父ハービンジャー。
破壊力満点の末脚は競馬場を選ばず、3戦全てで上がり最速。
2走前のアイビーSは追い上げ及ばず3着でしたが、16頭立てとなったホープフルSは大外一気35秒0のメンバー中最速上がりの末脚で世代トップクラスの牡馬を一蹴しました。
スタートに課題が残りますが、大きく出遅れなければ、規格外の瞬発力で好勝負は必至になることが推測されます。
牡馬撃破したホープフルS圧巻。
馬場、ペース問わず抜群に切れる破壊力満点の末脚で牝馬76年ぶり皐月賞制覇の快挙なるか注目されます。
【ジャンタルマンタル】センス抜群
父Palace Malice。母インディアマントゥアナ。母の父Wilburn。
昨年は3戦3勝でG1朝日杯FSを制覇。
特にマイル重賞の2戦では完勝でした。
クラシックを目指して距離を延前走の共同通信杯では新馬戦以来の1800mで1馬身半差の2着に敗退しましたが、超スローの中で我慢しつつもかかり気味の中で良い脚は使っていました。
朝日杯FS制した最優秀2歳牡馬。2000mは未知数ですが折り合い、センス抜群で問題なく、血統的に中長距離向きです。
【皐月賞2024予想】穴馬候補5選情報
【コスモキュランダ】自在に動ける
父アルアイン。母サザンスピード。母の父Southern Image。
前走はあり余る体力を生かし、7番手から早めに向正面から仕掛け、直線入口2番手から直線でも粘り腰を発揮し、余力を残しての完勝で、潜在能力が非常に高いことを示しました。
皐月賞は頭数が多くなるので難しくなりますが、ディープ記念では、大物をしりぞけた能力から、好勝負が期待されます。父アルアインは2017年の皐月賞優勝で血統的にも適性は十分です。
馬場が荒れるのは歓迎で、自在に動けるレースセンスは皐月賞では魅力です。
【ダノンデサイル】京成杯から直行
父エピファネイア。母トップデサイル。母の父Congrats。
前走の京成杯は、先団を見ながら4、5番手で進み、4コーナーで外を回って上がっていき、直線、34秒1の末脚で伸びていき、コスモブッドレアを交わして抜け出し1着、外を回りながらも切れのある末脚でした。
昨年ソールオリエンスは、京成杯から直行で皐月賞を制覇、レース間隔を空けて英気を養って皐月賞制覇に挑みます。
【ビザンチンドリーム】末脚に注目
父エピファネイア。母ジャポニカーラ。母の父ジャングルポケット。
デビュー戦の2歳新馬は、スタートで遅れましたが、中団に上がっていき、そのまま控えて追走、直線に入って33秒9のメンバー中最速上がりの末脚伸び、粘っている先行馬を交わして抜け出し1着。
デビュー戦2戦目のきさらぎ賞は、スタートで遅れて後ろ目のポジションから追走、道中馬群の外から上がっていき、直線外から追い込んでいき、33秒7のメンバー中最速上がりの末脚でハナ差交わして重賞制覇。
きさらぎ賞は良馬場発表でもかなり荒れた馬場状態で、パンパンとはいえない荒れ気味の今の中山も問題ないことが推測されます。
今回は初めての長距離輸送も控えていますが、昨年のソールオリエンスに続く、キャリア3戦目での皐月賞制覇の可能性も十分にあると思われます。
新馬勝ち後にきさらぎ賞制覇、心身ともに幼さがあり未知な面多いですが、まったく底は見せていないので、2戦連続で見せたメンバー中最速上がりの末脚に注目されます。
【サンライズアース】M.デムーロ騎手皐月賞4勝
父レイデオロ。母シャンドランジュ。母の父マンハッタンカフェ。
デビュー戦の2歳新馬は、少頭数競馬で無理することなく先手をとって、道中もマイペースで逃げることができ、直線に入っても先頭、ヴィスマールが迫ってきましたが抜かせずに逃げ切り1着。
前走のすみれステークスは、スタートでアオッて前半は後ろ目のポジションに控え、向こう正面で動いて一気に先団へ、先頭に立って直線でも先頭をキープ、後続に並ばせず、1馬身半差をつけて1着、これで2戦2勝。
心肺機能が並外れており、その身体能力を見せつけたのが前走のすみれステークス。出負けして中盤まで後方を進み、3コーナーで一気に進出してハナへ、直線半ばで後続を振り切って勝ち、心肺機能の高さを示しました。
舞台はタフさも要求される中山芝2000m、体力勝負に持ち込めば、皐月賞4勝のM.デムーロ騎手に期待です。
【サンライズジパング】パワーを要する馬場得意
父キズナ。母サイマー。母の父Zoffany。
サンライズジパングは予定していた弥生賞を右トモの違和感で回避。皐月賞1本に絞って調整されてきました。
ホープフルステークスは、新馬戦以来の芝でしたが、同枠のシンエンペラーをマークするように好位を進み、4コーナーで不利があり外へ膨らみましたが、しぶとい末脚で伸びて3着。
前走の若駒ステークスは、道中は控えて追走、4コーナーを回っていくあたりの手応えはもうひとつでしたが、直線に入って外から追い上げにかかると36秒1の末脚で一気に伸びて1着。
皐月賞の舞台は、僅差の3着だった昨年のホープフルステークスと同じ中山芝2000m。
連続開催の最終週、最終日なら、馬場状態も当時のようなパワーを要する状態になる可能性が高く、皐月賞での激走の可能性もあると思われます。
若駒ステークス快勝で実力を示し、皐月賞で侮れない存在です。
【皐月賞2024予想】血統馬5選情報
【シンエンペラー】世界的良血
父Siyouni。母Starlet’s Sister。母の父Galileo。
シンエンペラーは父Siyouni、母Starlet’s Sister、母の父Galileoという血統。
2022年のアルカナ・ドーヴィル1歳セールにて210万ユーロ(約3億円)で落札された超良血馬です。
凱旋門賞、仏ダービー、ガネー賞の勝ち馬ソットサスの全弟。
BCフィリー&メアターフのシスターチャーリーの半弟。
半姉シスターチャーリーは米国、北米のG1を7勝した世界的な名馬です。
母の父Galileo(父Sadler’s Wells)の重厚な欧州血脈が底力を高められ、スタミナ消耗戦で無類の強さを伝えます。
母の父Galileoの血統からトリッキーな皐月賞中山芝2000mへの適性は高いと思われます。
【ジャンタルマンタル】中長距離向き
父Palace Malice。母インディアマントゥアナ。母の父Wilburn。
母インディアマントゥアナはレッドカーペットH(米G3・芝11F)勝ち馬。
母父ウィルバーンはインディアナダービー(米G2・ダ8.5F)勝ち馬。
父Palace Maliceはダート2400mの米G1ベルモントSを制しており、その弟には春の天皇賞馬ジャスティンパレスやステイヤーズS勝ち馬アイアンバローズがいます。
母も芝2200mの米G1を勝っており、血統背景はむしろ中長距離向きです。
【ホウオウプロサンゲ】キズナ産駒
父キズナ。母セルキス。母の父Monsun。
ホウオウプロサンゲは母セルキスが独G2勝ち馬、母父Monsunは独の2400mのG1勝ち馬、母母父がノーザンダンサー系、兄は皐月賞2着のヴェロックス。
ヴェロックス(皐月賞2着)やビューティーウェイ(JRA3勝)の半弟で、母セルキスは独オークストライアル(独G2・芝2000m)勝ち馬。
母父Monsunは独の2400mのG1勝ち馬、ドイツの名種牡馬でソウルスターリング(オークス、阪神JF)などの母父です。
父キズナはダービー馬でソングライン(ヴィクトリアマイル、安田記念)などを出し種牡馬としても成功しています。
キズナ×モンズンはシュバルツクーゲル(東京スポーツ杯2歳S2着)と同じ配合です。
日本ダービー勝ち馬であるサンデーサイレンス系のキズナの産駒の血統に注目です。
【サンライズジパング】キズナ産駒
父キズナ。母サイマー。母の父Zoffany。
サンライズジパングは祖母Serisiaが仏G3の勝ち馬、母父Zoffanyは1200mの愛G1勝ち馬、母系からは豪G1馬Contributerなどが出ています。
グランシエロ(JRA3勝)の半弟、ATCチッピングノートンS(豪G1・芝1600m)のコントリビューターの近親です。
母母セリシアはプシュケ賞(仏G3・芝2000m)勝ち馬。
ディープインパクトの種付け相手だった社台グループの一流の繁殖牝馬が、キズナに回ってきたので、今年の3歳世代のキズナ産駒は大注目です。
【ジャスティンミラノ】キズナ産駒
父キズナ。母マーゴットディド。母の父Exceed And Excel。
ベルモントオークス招待S(米G1・芝10F)勝ち馬マジックアティテュードやサンドリンガム賞(仏G2・芝1600m)勝ち馬ミッションインパッシブルの半弟。
母マーゴットディドはナンソープS(英G1・芝5F)勝ったスプリンターで、母系の血統は一流です。
ディープインパクトの種付け相手だった社台グループの一流の繁殖牝馬が、キズナに回ってきているので注目です。